@五輪中止後
J党幹部「お願いします!」
繁栄資金担当者「しかし、以前私たちが申し出た時、みなさんは断ったではないですか」
幹部「あの時は、まさか五輪が中止になるとは思っていなかったのです。五輪により国の空気が変わり、経済も復興すると思っていたのです」
担当者「しかし、あの時だって苦しんでいる民はたくさんいたはずですよ。あの時に私たちが申し出た繁栄のための資金を国民に配っていれば、今のような状況にはなっていなかったのではないですか?」
幹部「全くおっしゃる通りです。私たちに先見の明というものがなかったのです」
担当者「しかも今は総選挙を間近に控えた時期です。まさか自分たちの支持を得るために、この繁栄資金を使おうと考えているのではありませんか?」
幹部「滅相もありません。私たちはいつでも国民のことを第一に考えています。五輪の夢が消え、国民にどうしても希望を与えなければならないことが分かった故、このようにお願いに参っている次第です」
担当者「この資金は100%民のために使われるべきものです。ほかの使い方は一切許されないことは承知していますか?」
幹部「もちろんです。今回お出しいただいた資金は、間違いなく国民の救済そして繁栄のために使うことをお約束します」
担当者「わかりました。そこまで言うのならあなた方を信じましょう」
幹部「ありがとうございます!」
党本部にて
重鎮「よし!それではすぐに繁栄資金を民に配る手はずを整えろ!あらゆる手を使って、全ての民に資金が行き渡るようにするんだ!」
秘書「はい!」
重鎮「間違っても資金の配布を選挙後に持ち越すような真似はするなよ。それでは意味がないからな。選挙が始まる前に全て配り終えて、我が党の人気と信頼を回復するんだ。そうして我が党がもう一度与党の座につけば、配った資金などいくらでも回収できる。わかったら早く行って、国を任せられるのはあなたたちしかいませんと言わせて来い!」
秘書「はい!」
そして、まもなく全国民に予想を遥かに超える額の給付金が支給された。
国民A「やっぱり頼りになるのはJ党だね」
国民B「なんだかんだ言ってもこの国はずっとJ党が動かしてきたんだ。最後には必ず何かやってくれると思ってたよ」
国民C「J党最高だぜ!」
党本部にて
秘書「先生!国民の支持率が急上昇しています!このままいけば、次の選挙も我が党の圧勝は間違いありません!」
重鎮「よし!選挙までまもなくだ。まだまだ資金は配布予定だと宣伝してこい!」
秘書「承知しました!」
そして、選挙公示日までわずかとなった日の朝、次の見出しが全新聞の一面を飾った。
「前総理、内乱罪容疑で逮捕!」
「複数の総理経験者逮捕の可能性!」
「外国機関より証拠提供か!?」
また次の見出しは、それでも政権与党に投票しようとする人たちを翻意させるのに十分なものであった。
「財務省、繁栄資金は政権に関わらず継続と発表!」
この物語はフィクションであり、実在の人物及び団体とは 一切関係ありません。